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2 3 2017年4月14日 金曜日(566日目) 「おれはこれからどうしたらいいんだろう。」 ユキさんはよくこう呟いていたのだが、最近はもう少し細かな物言いをするようになった 「みんな忘れてしまって、どうやって生きていけばいいんだ。」 「おれは何をすればいい?」 私はいつも、 「しっかり食べてたくさん眠る。 起きたら一所懸命リハビリする。 今はこれが一番大事なこと。 先のことは何も心配しなくていいから、私と一緒に一日一日を大切に生きていくこと。」 と言っていたのだが、この夜はもう一言つけ加えた。 「また絵を描いて欲しいなぁ。」 「私、ユキさんの絵が大好きなんだよ。」 「無理。」 「おれはヘタクソ。」 「何描いていいか分からない。」 2010年のポエタ展に出した自分の絵を忘れていて、ユキさんはいつも暇さえあればクロッキー帳に鉛筆でたくさんの線をぐるぐる描いていたことを説明した。 「今度その絵を見てみる?」 「見せて。」 これは吉兆! 昔話や写真を辛くなると言って怒って拒否していたのに。 「美大の絵画科や彫刻科でしっかりやってた人たちに比べたら、私もユキさんも絵はヘタクソなわけで。 それでもさ、ユキさんは何か対象を目掛けて描くっていうんじゃなくて、手を動かしていると自分の中から何が出てくるんだろう?って感じでどんどん描いてたんだよ。 それ出てきたものに驚いたりがっかりしたり、喜んだりしていたの、そういう絵。」 「私はユキさんと出会って最初に見た絵、ベッドとステレオとストーブしかないアパートの部屋にあったスケッチブックのあの絵が、本当に奇妙で、見たことのない絵で、こんな絵を描く人の中身は何なんだろうと思ったんだよ。」 いつもならここで「もうやめて!」なんだけど、 「ぴよちゃんと一緒に描いてみる。」 「! 一人で描かなきゃ! じゃ、明日からやってみよう!」 「やるなら今ここでじゃなきゃダメなんだ。」 今ここで、と言っても夕食前ベッドで休んでいる時の話で、テーブルに移動するか聞いたら、 「今ここで!」 ベッドのリクライニングを起こして、重ねた枕を机にして真剣に描き始めた。 今までずっと自発的に描くことはなく、絵本の挿画の模写やモチーフを置いてのスケッチも嫌々な感じだった。 まして自由想画なんてとてもとても……。 かつてユキさんはぐるぐると線を描いては自分の心の中を探っていた。 わざと面白くしないように、 わざといい絵にしないように、 小さな深い葛藤を秘めながら描いていた。 「おれは一体何者なんだ。」 普遍的な問いではあるが、今のユキさんには生きるのに必要な大問題となった。 無心に、いや文字どおり必死に描くことで空虚を抜け出し、新しい人生の光と闇をまた味わえるのかも知れない。
by atelier-poeta
| 2017-04-15 23:11
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