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へんてこりんな一日で、おかげでバスに乗って車を取りに行かなければならなかった。 ふと月を見ると縦横に光が流れて、まるで巨大な星のように見えた。思わずぼくは眼を凝らしてみたがやっぱり星のようだ。これは何かの前触れに違いないと思ってますますじっと眺めていると、通り過ぎる街灯の灯まで星じゃないか。 何てことだ! これじゃまるで星の大安売りだ。 バスを降りてしかしもう一度たしかめてみたけれど、もうすでに大安売りは終っていた。残っていたのは月の下の大小二つの小さな星だけ。 昔三日月を見た時には、たしかこの星は一つだけだった。 こんな形で、何かのトレードマークみたいだったけれど非常に気に入っていたのでいつも眺めていた。二つあるのに気づいたのはかなり前のことだが、それと前後してもう一つ気づいたことがあった。ぼくの眉間にあるホクロが以前は一つだったのに二つになっていたことだ。 写されてしまった。 しかしその時はもう遅かった。 空はおもしろい。 大昔は星が降るほどあった。あんなのがいっぺんに落ちてきたら人間なんてひとたまりもなくやられてしまうだろう。古代人にとって何が一番恐ろしかったといって、これほどの恐怖はなかっただろうことはたしかだ。空からかなりの数の星を抹殺したのはほかでもない、人間の勝利だ。 あれくらいの星の数なら今降ってきても絶対によけられるだろう。 そのためだったのか。最近再び巷にもの星竿屋が出没し始めたのは。 「よけられては大変。」と地上に下りて星をバラまこうとしている。 しかし無駄な努力じゃないのかね、星屋さん。だれももの星なんか買いはしない。その証拠にいつ見ても危ない流れ星はトラックに満載だ。 何! いつも満載? 売る気がない。さてはやはり……。 そうか奴は知っていたのか、君が入院することを。 何てことだ。もっと早く気がついていれば……。先を越されてしまった。 ドアを開けようとしたらノブのところに白い紙切れが見えたので、君から手紙が着いたと思って手にしてみると、赤い字で書いてあることは書いてあるのだけれど、その字はただの『電気料金払込通知票』、『速達』はたったの二文字でいいのに。自動振り込みだということも忘れて性懲りもなくまた持ってきたのか。 一体いくらなんだ? 762円? うそだろう。今月はトイレの電気も消し忘れたし、レコードだってかなり聴いた。それにベッドの大球だって点けたのに……。 仕方がない。電気屋に文句を行っても始まらない。そうだ。来月はもっとトイレの電気を消し忘れよう。 そう思い直してドアを開けたとたん、空からまた一つ、白い紙切れが落ちてきた。危うくぶつかりそうだったけれどぼくはうまくよけた。星をよける自信があるのにこれくらい何でもない。 達筆で「先生」としたためてあった。 大家の小母さんはたしかにこれを見ただろうか。一度訊ねてみなければならない。 封を切ると中からは、頼まれた手紙を一日出し遅れたことの君の母親らしき人の詫び文が添えられ、君の青い手紙が出てきた。そうか君は入院してしまったのか。 40.2度だって? ……しかし仕方がない。 君は嵐を持ってやって来た。君が故郷へ帰るやいなや春一番が吹き荒れ、名実ともに春が来た。今君の熱は春となって蒔き散らされていく。春が広まり次第君の熱も下がってしまうだろう。 ねえ、ねえ、君。春の使いの気分はいかが? ぼくにも分けてもらいたい。この手紙が届くころ君は快い余韻を楽しんでいることだろう。君の春上がりの顔を早く見たいものだ。 おみやげはおあずけになったけれど、ちょうど今宵の月はせんべいのように丸い。あれを食べればきっと草加せんべいの味がする。 ハハハ、うさぎが君に向ってウインクをした。 こらこら、よそ見をすると餅が逃げるよ。 (「もの星竿屋と春の嵐と月のうさぎの話」) 画用紙、鉛筆、墨、535×455mm
by atelier-poeta
| 2011-01-13 19:36
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